A02-1 メダカ365日リズム

地球の公転により、生物をとりまく環境は季節によって大きく変化しています。繰り返し訪れる環境の季節変化に積極的に適応するために、生物は進化の過程で約1年のリズムを刻む概年時計を獲得しました。環境の季節変動のない、恒常条件下においても内因性の概年リズムを示すメダカをモデルとして、約1年のリズムが刻まれる仕組みと365日に同調する仕組みに迫ります。

KAKEN
時間タンパク質学:概年タンパク質が365日をカウントする制御機構

A02-2 タケ120年リズム

タケは栄養繁殖で数十年間成長した後に一斉に開花します。開花周期は長いものでは120年で、これは知られている中で最長の生物リズムです。この「竹の一斉開花」は生物がどのように「時」を計測するかを理解するうえで重要な現象ですが、分子メカニズムは未だに解明されていません。久本班(A02-2)では、開花周期や開花からの経過年が記録されている複数のモウソウチク系統を利用してライフステージを擬似的に再構成し、マルチオミクス解析から候補分子を絞り込み、タケの培養細胞やモデル植物での分子生物学的な解析を用いて検証します。これにより数十年という群を抜いて長期の時間スケールを計測する分子メカニズムの解明を目指します。

KAKEN
120年周期の開花リズムを決定する時間タンパク質学

A02-3 CaMKII30分タイマー

CaMKIIは神経発火に伴って生じるミリ秒スケールでの細胞内Ca2+流入に応答して神経可塑性制御を担う中心分子として知られています。一方で、私たちは齧歯類における数分~数十分スケールで生じる睡眠覚醒エピソードのスイッチング時定数がCaMKIIの多重リン酸化状態で制御されていることを明らかにしてきました。大出班(A02-3)では、CaMKIIが示しうる数十分スケールでのゆるやかな生化学的活性変動を探索し、ゆっくりとした時間スケールの活性変化の理解と操作を行います。さらに生化学的な手法と、遺伝学的な手法を組み合わせ、CaMKIIの遅い時間スケールのダイナミクスと中枢神経系機能の関係を検証し、CaMKIIによる時間情報処理機構に迫ります。

KAKEN
時間タンパク質学:秒から分を繋ぐ時間情報エンコーダーとしてのCaMKII