今後の予定
キックオフシンポジウム・公募研究説明会を下記の日程・場所にて開催予定です。
2024年7月26日(金)・東京大学本郷キャンパス
詳細が決まりましたら掲載します。
代表挨拶
吉種光
東京都医学総合研究所 プロジェクトリーダー (研究室HP)
東京大学大学院理学系研究科 准教授
生命には、約24時間周期の概日リズムをはじめ、心拍、体節形成、季節応答、一斉開花など、秒単位から年単位まで、様々な時間スケールのリズムがみられます。本領域では、このように周期的な生命現象や、時をカウントするタイマーのような仕組みに着目し、多様な「時」を生み出す分子メカニズムを解明します。
本領域が着目するのがタンパク質ダイナミクスです。特定のタンパク質がもつ物性や酵素活性、タンパク質間相互作用、翻訳後修飾、立体構造変化などが「時」をカウントしていると考え、このような研究領域を「時間タンパク質学(Chronoproteinology)」と名付けました。さらに、これらタンパク質レベルでの制御に加えて、1つのRNAからどれだけタンパク質を翻訳するのか、という「パラメトリク翻訳」の制御が鍵を握ると考えています。多様な生物種と時間スケールを扱う研究者が集結し、「時」を生み出す分子メカニズムの理解を目指します。
研究組織
学術変革領域研究A「時間タンパク質学」は、3つの班で構成されています。
A01班では、学変B「時間タンパク質学」のメンバーを中心に、24時間の概日リズムの理解を目指します。
A02班では、24時間という枠から離れ、30分、365日、120年と幅広いスケールの「時」にアプローチします。
A03班では、学変B「パラメトリク翻訳」のメンバーを中心に、全ての時間スケールに対して「パラメトリク制御」の観点からメカニズムを紐解きます。
A01
概日リズムの時間タンパク質学
松尾班(A01-1)は、除核後でも長期間生存できる巨大単細胞藻類カサノリを活用し、転写がなくても24時間をカウントする分子メカニズムに迫ります。また、希望する領域メンバーにモデル生物カサノリを提供します。
秋山班(A01-2)は、生物物理学的な視点から、シアノバクテリアのKaiCタンパクが温度補償された概日リズムを生み出す仕組みを理解します。
吉種班(A01-3)は、マウスの時計タンパク質において、昼と夜とで、翻訳後修飾の状態や分子間相互作用が切り替わることを見出しており、これらのタンパク質ダイナミクスが24時間をカウントする仕組みに迫ります。
A02
非概日リズムの時間タンパク質学
吉村班(A02-1)は、生物の季節応答の基盤である概年リズムに着目し、これを駆動する分子機構の解明を目指します。
久本班(A02-2)は最大120年という極めて長い周期をもつ「タケの一斉開花」について、完全なブラックボックスであるカウント機構に取り組みます。
大出班(A02-3)は、神経可塑性制御から睡眠まで、広い時間スケールの神経機能制御に関わるCaMKIIタンパク質を対象に、神経発火よりも長い時間スケール(約30分)をカウントする分子機構に迫ります。
A03
時間タンパク質学を支えるパラメトリク翻訳
A03は、A01とA02の時間軸にまたがり、それらを支える形で機能します。翻訳は「裸の」タンパク質の量を変えます。そのため、タンパク質ダイナミクスの中でも特にリン酸化などの翻訳後修飾に焦点を当てる場合、翻訳制御は修飾制御と表裏一体の関係にあります。
土居班(A03-1)は翻訳や細胞の物理化学的パラメーターを自在に操り、時間タンパク質の制御機構を解析します。
岩崎班(A03-2)はRibo-Seq技術により、1つのRNAからどれだけのタンパク質が翻訳されるか、つまり翻訳速度をハイスループットに計測します。
このような独自の技術を活用し、多様な「時」を生み出すメカニズムに迫ります。