A01-1 カサノリ除核リズム

カサノリは傘のような形をした巨大単細胞生物です。たった一つの核は細胞の下端(仮根)に限局して存在するため、容易に除核が出来ます。除核したカサノリが概日リズムを刻み続けることは半世紀以上前に示されましたが、どのような仕組みかは解明されないままに、カサノリの研究は衰退してしまいました。松尾班(A01-1)は、学術変革領域Bにおいて復活させたカサノリの実験系を用い、最先端の解析技術を有する領域メンバーとの連携により、除核カサノリが転写に依存せずに24時間をカウントする仕組みに迫ります。

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時間タンパク質学:除核カサノリが24時間をカウントする分子機構

A01-2 シアノKaiCリズム

シアノバクテリアにおいては、3種類の時間タンパク質(KaiA、KaiB、KaiC)とATPを混合するだけで、概日リズムを試験管内に再構成することができます。時間タンパク質KaiCには、1日に1回の頻度を安定に生み出す周波数特性が原子レベルの構造としてエンコードされており、その特性が多重の階層を貫くように伝播されることで、細胞レベルのリズムの周波数や温度補償性が決定されます。A01-2班では、KaiCが内包する複雑かつ多様な機能や構造を漏れなくかつ定量的に把握し、それらの知見を指標とした探索基盤の確立を目指します。

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時間タンパク質学:KaiCの反応・動態・構造から探る概日時間制御機構

A01-3 翻訳後修飾コード

24時間周期の自律振動メカニズムとして転写フィードバック制御の重要性が提唱されてきましたが、これらは真の時計振動子からの機能出力リズムの一つにすぎないかもしれません。本領域では、特定のタンパク質がもつ物性や酵素活性、タンパク質間相互作用、翻訳後修飾、立体構造変化などが「時」をカウントしていると考え、真核生物において核がなくても(転写リズムがない状態において) 約24時間周期で自律的に振動するタンパク質振動子を同定します。A01-3班では、学術変革領域研究Bで同定した哺乳類時計タンパク質の複合体形成リズムと翻訳後修飾リズム、そしてそれを制御すると期待される分子に焦点を絞り、温度補償性的に24時間をカウントする仕組みに迫ります。さらに、研究代表者が得意とする生化学や質量分析を最大限に活用し、領域メンバーの研究サポートを実施します。

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時間タンパク質学:概日時計の24時間をカウントする翻訳後修飾コード