大出 晃士
研究項目 A02-3 代表
CaMKII30分タイマー
大出 晃士
東京大学
大学院医学系研究科
機能生物学専攻
研究キーワード:
タンパク質リン酸化 CaMKII 酵素反応速度論 プロテオミクス
WEBリンク:研究室 researchmap
研究概要
学部1回生の時に初めて手にした教科書に、ヘモグロビンは生命の縮図である、と書かれていました。ヘモグロビン4量体の相互作用が協同的な酸素分子の結合を生み、効率的な酸素運搬が可能になる—それを生命の縮図とは、なんと大げさな、などと思ったものです。それから約20年が経ちました。染色体複製、概日時計、そして睡眠覚醒と、私の研究対象は変わってきましたが、どの実験系においても、それぞれの系の特徴的な振る舞いを象徴する、特定のタンパク質特性を見出すことができます。例えば、染色体複製開始のON/OFFを決める特定のタンパク質はまさにスイッチ的な非線形応答を惹起すること、概日時計の振動周期長は特定のタンパク質の特定の領域に生じるリン酸化によって大幅かつ連続的に変化することです。ヘモグロビンが酸素運搬に適した機構を有するように、スイッチ的応答や自律振動という複雑な制御様式の背後には、それぞれの制御を担うのに適したタンパク質特性があるようです。神経可塑性を担う中心的なリン酸化酵素であるCaMKIIは、活性化に伴いドラスティックな構造変化を示す12量体構造を有し、まさにタンパク質複合体が「マシナリー」として働くさまを想像させます。中枢神経系が示す機能の時間スケールはミリ秒から年単位まで多岐にわたります。本領域では、CaMKIIが示す長い時間スケールの生化学的ダイナミクスに着目し、CaMKIIマシナリーがカバーする時間スケールの限界を探求します。
主要論文
- Tone D, Ode KL, Zhang Q, Fujishima H, Yamada RG, Nagashima Y, Matsumoto K, Wen Z, Yoshida SY, Mitani TT, Arisato Y, Ohno RI, Ukai-Tadenuma M, Yoshida Garçon J, Kaneko M, Shi S, Ukai H, Miyamichi K, Okada T, Sumiyama K, Kiyonari H, Ueda HR. Distinct phosphorylation states of mammalian CaMKIIβ control the induction and maintenance of sleep. PLoS Biol. 20: e3001813. (2022)
- Ode KL, Shi S, Katori M, Mitsui K, Takanashi S, Oguchi R, Aoki D, Ueda HR. A jerk-based algorithm ACCEL for the accurate classification of sleep-wake states from arm acceleration. iScience. 25: 103727. (2022)
- Ode KL, Ueda HR. Phosphorylation Hypothesis of Sleep. Front Psychol. 11: 575328 (2020)
- Ode KL, Ukai H, Susaki EA, Narumi R, Matsumoto K, Hara J, Koide N, Abe T, Kanemaki MT, Kiyonari H, Ueda HR. Knockout-Rescue Embryonic Stem Cell-Derived Mouse Reveals Circadian-Period Control by Quality and Quantity of CRY1. Mol Cell. 65: 176-190. (2017)
- Jolley CC, Ode KL, Ueda HR. A design principle for a posttranslational biochemical oscillator. Cell Rep. 2: 938-50. (2012)
略歴
2006年 大阪大学 理学部生物学科 卒業
2011年 大阪大学 大学院理学研究科生物科学科 修了 博士(理学)
2011年~2013年 理化学研究所・特別研究員
2013年~2019年 東京大学 大学院医学系研究科・助教
2019年~現在 東京大学 大学院医学系研究科・講師
主な所属学会
- 日本時間生物学会
- 日本生物物理学会
- 日本質量分析学会
- 日本薬理学会
- 日本分子生物学会
趣味
テニス(学術変革Aの期間内に再開したいと思っている)
ボルダリング(学術変革Aの期間内に再開したいと思っている)