
学部1回生の時に初めて手にした教科書に、ヘモグロビンは生命の縮図である、と書かれていました。ヘモグロビン4量体の相互作用が協同的な酸素分子の結合を生み、効率的な酸素運搬が可能になる—それを生命の縮図とは、なんと大げさな、などと思ったものです。それから約20年が経ちました。染色体複製、概日時計、そして睡眠覚醒と、私の研究対象は変わってきましたが、どの実験系においても、それぞれの系の特徴的な振る舞いを象徴する、特定のタンパク質特性を見出すことができます。例えば、染色体複製開始のON/OFFを決める特定のタンパク質はまさにスイッチ的な非線形応答を惹起すること、概日時計の振動周期長は特定のタンパク質の特定の領域に生じるリン酸化によって大幅かつ連続的に変化することです。ヘモグロビンが酸素運搬に適した機構を有するように、スイッチ的応答や自律振動という複雑な制御様式の背後には、それぞれの制御を担うのに適したタンパク質特性があるようです。それでは時間情報を担うタンパク質は、いかにもそれに適した特性を有しているのでしょうか。そういった特性は、Nemuriのような小さなペプチドにも備わりうるものなのでしょうか。生化学的測定(定量質量分析・ペプチド合成・熱安定性解析)とタンパク質ダイナミクスの数理的解析から、この謎に迫りたいと思います。
主要論文
- Yamaguchi, H.Q., Ode, K.L., Ueda, H.R. (2021) “A design principle for posttranslational chaotic oscillators” iScience 24, 101946.
- Sugai, S.S., Ode, K.L., Ueda, H.R. (2017) “A design principle for an autonomous post-translational pattern formation” Cell Rep. 19, 863-874.
- Ode K.L., Ukai H., Susaki E.A. et al. (2017) “Knockout-rescue embryonic stem cell-derived mouse reveals circadian-period control by quality and quantity of CRY1” Mol. Cell 65, 176-190.
- Nagano Y. and Ode K.L. (2014) “Temperature-independent energy expenditure in early development of the African clawed frog Xenopus laevis” Phys. Biol. 11, 046008.
- Jolley, C.C., Ode, K.L., Ueda, H.R. (2012) “A design principle for a posttranslational biochemical oscillator” Cell Rep. 2, 938-950.
- Ode K.L., Fujimoto K., Kubota Y. Takisawa H. (2011) “Inter-origin cooperativity of geminin action establishes an all-or-none switch for replication origin licensing” Genes Cells 16, 380-396.
略歴
2006年 大阪大学 理学部生物学科 卒業
2011年 大阪大学 大学院理学研究科生物科学科 修了 博士(理学)
2011年~2013年 理化学研究所・特別研究員
2013年~2019年 東京大学 大学院医学系研究科・助教
2019年~現在 現職
所属学会
- 日本時間生物学会
- 日本分子生物学会
- 日本薬理学会
- 日本生物物理学会
- 日本質量分析学会
趣味
テニス・ボルダリング・F1観戦(過去)
子供に遊ばれること (現在)