向山 厚

研究項目 A03

生命の時間を宿す機能的KaiCホモログの 探索技術の開発

向山 厚

研究キーワード:時計タンパク質 KaiC ATPase 進化 シアノバクテリア

大学の講義でタンパク質立体構造の美しさに魅了されて以来、私は一貫してタンパク質研究を推進してきました。研究を始めた当初は、タンパク質構造がどのように形成され(フォールディング)、そして維持される(安定性)のかといったタンパク質物性に関する研究を行っていましたが、概日時計を司る時計タンパク質の存在を知り、その機能発現メカニズムを解き明かしたいとの思いにかられ、一念発起して分野を変える決断をしました。以来、現在に至るまでシアノバクテリアの概日時計研究を続けています。近藤孝男教授(名古屋大)らのグループが発見したシアノバクテリアの概日時計は3種類の時計タンパク質(KaiA, KaiB, KaiC)から構成され、これら3種類のKaiタンパク質とATPを混合することで、概日リズムが試験管内に再構成できます。私は近藤教授そして秋山修志教授(分子研)とともに、概日時計の周期長を規定する因子(周波数特性)がただ1種類のタンパク質(KaiC)に内包されていることを提唱しました。KaiCはシアノバクテリアをはじめとする原核生物に固有のタンパク質ですが、概日時計を持つ他の生物種においてもKaiCと同じく周波数特性を備えた計時因子(機能的KaiCホモログ)が形を変えて存在しているのかもしれません。本班では、シアノバクテリア由来KaiCの研究から得た知見をもとに機能的KaiCホモログを探索する技術を開発し、哺乳類における24時間性を実現する分子機構解明を目指します。また、開発した技術を他の計画班に提供することで領域全体の底上げにつなげます。

主要論文

  1. Mukaiyama, A, Ouyang D, Furuike Y, Akiyama S*. (2019) “KaiC from a cyanobacterium Gloeocapsa sp. PCC 7428 retains functional and structural properties as the core of circadian clock system.” Int. J. Biol. Macromol.. 131, 67-73.
  2. Mukaiyama, A*, Furuike Y, Abe J, Koda SI, Yamashita E, Kondo T, Akiyama S* (2018) “Conformational rearrangements of the C1 ring in KaiC measure the timing of assembly with KaiB” Sci. Rep. 8, e8803. (*co-correspondence)
  3. Abe J#, Hiyama TB#, Mukaiyama A#, Son S#, Mori T#, Saito S, Osako M, Wolanin J, Yamashita E, Kondo T, Akiyama S*. (2019) “Atomic-scale origins of slowness in the cyanobacterial circadian clock.” Science. 349, 312-316. (# co-first)
  4. Murayama Y#, Mukaiyama A#, Imai K#, Onoue Y, Tsunoda A, Nohara A, Ishida T, Maéda Y, Terauchi K, Kondo T, Akiyama S. (2011) “Tracking and visualizing the circadian ticking of the cyanobacterial clock protein KaiC in solution.” EMBO J. 30, 68-78. (co-first)

略歴

2002年 大阪大学工学部応用自然科学学科 卒業
2002年~2007年 大阪大学大学院工学研究科物質・生命工学専攻
2007年 博士(工学)、大阪大学
2007年~2010年 分子科学研究所 博士研究員
2010年~2012年 名古屋大学大学院理学研究科 博士研究員
2012年~現在 分子科学研究所 助教

所属学会

  • 蛋白質科学会
  • 生物物理学会
  • 時間生物学会

趣味

スポーツ観戦、グルメ旅、子供と遊ぶこと